症例報告
術後化学放射線療法により長期生存した多発性骨転移を伴う胃癌の1例
広瀬 和郎, 玉木 雅人, 千田 勝紀, 廣野 靖夫, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫
福井医科大学第1外科
症例は57歳の男性.食欲不振,右腰・臀部痛,体重減少を訴え受診し,胃体部の4型胃癌,多発性骨転移と診断された.骨シンチで肋骨,腰椎,骨盤に多発性の異常RI集積を認め,骨X線写真で骨盤に多発性溶骨像を認めた.胃全摘,D1リンパ節郭清を行い,組織学的に低分化腺癌(中間型),se,ly1,v2,n1,H0,P0,cy0で,骨転移以外の癌遺残はないと判断した.術後早期の全身化学療法(mitomycin C,5-FU)により疼痛は消失し,さらに全身化学療法(FAM変法:5FU,adriamycin, mitomycin C)と放射線治療(Linac,3Gy,12回)により,術後6か月で骨シンチの異常RI集積像は消失し,骨X線写真で溶骨像は硬化した.以後,外来で通院治療(UFT内服とレンチナン静注)を継続したが,臨床症状はなく,定期的なRI,X線検査でも再発はなく,術後9年8か月で他病死(心不全)した.本症例の長期生存には術後の化学放射線療法が骨転移に奏効したことが要因と考えられた.
索引用語
gastric cancer, bone metastasis, chemoradiotherapy
日消外会誌 34: 1732-1736, 2001
別刷請求先
広瀬 和郎 〒910-1193 福井県吉田郡松岡町下合月23-3 福井医科大学第1外科
受理年月日
2001年9月19日
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