症例報告
術後体外放射線照射が有効と考えられたstage IV b膵体・頭部癌の8年生存例
中川 登, 山根 哲郎, 竹田 靖, 上野 満久, 北井 祥三, 岡野 晋治, 山口 正秀, 菅沼 泰, 中西 正芳, 安川 林良
松下記念病院外科
無症状で定期健診(超音波検査)にて発見されたTS3,A3(左胃動脈)のStage IV b膵体・頭部癌に対して尾側膵亜全摘,脾摘,胃全摘,横行結腸間膜部分切除,胆嚢摘出術,D1リンパ節郭清を施行した.肉眼的には根治度Bと判断したが,組織学的には,腹腔動脈・上腸間膜動脈神経叢周囲への癌の浸潤の可能性が高いと考えられ,術後,同部に体外放射線照射を施行した.その後,左頸部リンパ節に再発し,同部にも体外放射線照射を施行した.術後8年経過した現在,他に癌再発の所見なく,健在な症例を経験した.長期生存の要因は,癌の局所遺残をなくするための徹底した切除と,体外放射線照射療法と考えられる.Stage IV b膵癌でも,局所とリンパ行性の過進展のみで,膵癌の主たる予後規定因子の肝転移(静脈侵襲)の認められないものは,原発巣切除と体外放射線照射療法で,長期生存が望める可能性がある.
索引用語
pancreatic body and head carcinoma, postoperative irradiation, long-term survival
日消外会誌 35: 1610-1614, 2002
別刷請求先
中川 登 〒570-8540 守口市外島町5-55 松下記念病院外科
受理年月日
2002年6月25日
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