症例報告
AIDSによる播種性非定型抗酸菌感染症にて腸閉塞をきたした1手術例
村田 聡一郎, 井坂 直秀, 山田 圭一, 稲川 智, 阿竹 茂, 辻 勝久, 石川 詔雄, 稲留 征典*
筑波メディカルセンター病院消化器外科, 同 病理*
AIDSが誘因となった播種性非定型感染症にて腸閉塞をきたした1例を経験した.症例は48歳の男性.主訴は腹痛と嘔吐であった.開腹既往歴なし.1996年カリニ肺炎にてAIDS発症,その後サイトメガロ網膜炎,陰部ヘルペス,頸部リンパ節腫脹を伴う播種性非定型抗酸菌感染症を発症し当院外来にて加療中であった.2000年に左下腹部痛を主訴に当院を受診した.身体所見上左下腹部圧痛を認め,諸検査にて腸閉塞と診断され,入院した.入院3日後症状増悪し緊急開腹手術を施行した.開腹所見にて,横行結腸と癒着しarchを形成する上部空腸腸間膜リンパ節の著明な腫大を認め,空腸が陥入し腸閉塞となっていた.Archを解除し陥入する小腸を引き出したところ,腸管の色調は著明に改善を認めたために腸切除を行うことなく手術を終了した.術後25日目に退院したが,術後123日目にAIDSの増悪にて死亡した.AIDSが誘因となった腸閉塞は本邦でも今後増加する可能性があり,文献的考察を加え報告する.
索引用語
HIV, small bowel obstruction, Mycobacterium avium intracellulare
別刷請求先
村田 聡一郎 〒305-8576 つくば市天久保2-1-1 筑波大学附属病院消化器外科
受理年月日
2002年10月30日
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