症例報告
術前に診断しえた瘻孔形成を伴う回腸原発T細胞性悪性リンパ腫の1例
自見 政一郎, 佛坂 正幸, 松本 伸二, 藤井 圭, 柴田 恵介*, 谷本 昭英**, 武田 成彰
国立小倉病院消化器病センター外科, 同 内科*, 産業医科大学第2病理**
術前に診断しえた回腸原発T細胞性悪性リンパ腫の1例を経験した.症例は64歳の男性.主訴は便秘,右下腹部痛.右下腹部痛の精査のため施行した注腸検査にて回盲部腫瘍を指摘された.小腸造影透視にて回腸末端に潰瘍性病変を認め,回腸末端と上行結腸の間に瘻孔を認めた.ガリウムシンチにて右下腹部に集積を認めた.大腸内視鏡検査にて回腸末端に全周性の粗大結節と潰瘍形成が認められ,生検にてT細胞性悪性リンパ腫と術前に診断された.右半結腸切除術を施行した.切除標本にて異型細胞は消化管壁内に限局していた.術後に化学療法を4クール行った.術後2年8か月間経過した現在再発は認めていない.小腸原発のT細胞性悪性リンパ腫はまれで,報告例の多くは,穿孔あるいは腸閉塞などで発症し,緊急手術後の病理検査にて診断されている.瘻孔を形成した回腸原発T細胞性悪性リンパ腫と術前に診断しえた症例を文献的考察を加え報告する.
別刷請求先
自見 政一郎 〒802-8533 北九州市小倉南区春ヶ丘10-1 国立小倉病院消化器病センター外科
受理年月日
2002年12月18日
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