症例報告
内腸骨静脈血栓症を合併した上行結腸癌の1治験例
林 忠毅, 中村 利夫, 丸山 敬二, 三岡 博, 深澤 貴子, 宇野 彰晋, 東 幸宏, 今野 弘之, 中村 達
浜松医科大学第2外科
症例は53歳の女性,右下腹部痛を主訴に来院.大腸内視鏡検査,腹部CT検査にて上行結腸に約8 cm大の2型腫瘍が認められた.また術前に行った造影MRIのT1強調像で右内腸骨静脈に造影効果を認めない部位が認められ,血栓性閉塞が疑われた.上行結腸癌の術前に,肺梗塞を防ぐ予防的な治療の必要があると考えられた.全身麻酔下に肺梗塞の予防処置として下大静脈フィルターを留置した後に結腸右半切除術を施行した.周術期に肺梗塞症などの合併症はなく経過は良好で,術後15日目に退院,術後10か月の現在,癌の再発および肺梗塞の徴候なく社会復帰している.内腸骨静脈血栓症は症状に乏しく,術前に指摘されることはまれである.腹部手術の術前に腸骨静脈血栓を認めた場合は肺梗塞の原因となりうるので,術前の下大静脈フィルターの挿入が予防的治療として有効であると考えられた.
索引用語
internal iliac vein thrombus, IVC filter, Colon cancer
別刷請求先
林 忠毅 〒431-3192 浜松市半田山1-20-1 浜松医科大学第2外科
受理年月日
2003年7月23日
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