症例報告
特発性胆嚢穿孔の1例―本邦報告29例のまとめ―
安井 應紀, 塚本 文仁, 今 博
秋田労災病院外科
症例は72歳の女性で,上腹部痛を主訴に近医を受診し,急性腹症の診断にて当院へ紹介された.腹部触診では反跳痛を有し,筋性防御を来していた.上部内視鏡検査にて十二指腸球部に多発性の潰瘍を指摘されたが,腹部単純X線像では腹腔内遊離ガス像は認めなかった.近医にて行われた腹部CTでは腫大した胆嚢と上腹部に腹水の貯留を認めた.3時間後当院にて行ったCTでは,腹水の増加,胆嚢の縮小化,そして胆嚢周囲に新たな液体の貯留を認めた.汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹した.開腹所見では胆嚢体部が穿孔し胆汁が漏出していた.手術は胆嚢摘出術を施行した.胆嚢結石は有していなかった.病理検査では菲薄化した胆嚢壁のうっ血,軽度の好中球とリンパ球の浸潤を認めるのみで,周囲の炎症は乏しく,特発性胆嚢穿孔と診断した.本症の診断にあたり経時的画像検査が有用であると考えられた.
索引用語
idiopathic perforation, gallbladder, diffuse peritonitis
日消外会誌 39: 1391-1396, 2006
別刷請求先
安井 應紀 〒018-5604 大館市軽井沢字下岱30 秋田労災病院外科
受理年月日
2006年1月25日
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