症例報告
SLE患者に発症したステロイド内服が原因と考えられる腸管穿孔の1例
秦 政輝, 前多 力, 山本 哲朗, 北島 政幸, 笠巻 伸二, 渡部 智雄, 石引 佳郎, 細田 誠弥, 坂本 一博, 鎌野 俊紀
順天堂大学医学部下部消化管外科
症例は55歳の女性で,突然の下腹部痛を主訴に受診した.患者は33歳時に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;以下,SLEと略記)を発症し,副腎皮質ステロイドの内服治療を受けていた.腹部CTで腹腔内遊離ガス像と腫瘤を認め,消化管穿孔による腹膜炎の診断で開腹手術を施行した.腹腔内全体に膿性腹水が貯留し,S状結腸間膜内に便汁と便塊を認めた.S状結腸穿孔の診断でS状結腸切除,人工肛門造設を施行した.切除標本ではS状結腸の腸間膜側に3 cm大の潰瘍を認め,潰瘍底に1 cm大の穿孔部を認めた.病理組織所見では穿孔部周囲は肉芽組織で覆われ炎症細胞浸潤は比較的軽度で,腸管壁内に血管炎および血栓形成の所見は認めなかった.以上より,自験例の穿孔の原因は除外診断よりステロイドによる可能性が示唆された.
索引用語
systemic lupus erythematosus, intestinal perforation, steroid
日消外会誌 39: 1408-1413, 2006
別刷請求先
秦 政輝 〒113-8421 文京区本郷2-1-1 順天堂大学医学部下部消化管外科
受理年月日
2005年12月16日
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