症例報告
プロテインS欠損症に起因すると考えられた上腸間膜静脈血栓症による空腸壊死の1例
芳澤 淳一1), 小出 直彦1)2), 斉藤 拓康1), 古澤 徳彦1)2), 小林 聡1), 持塚 章芳3), 石田 文宏4), 中村 直5), 宮川 眞一1)
信州大学消化器外科1), 同 救急集中治療部2), 同 中央検査部3), 同 血液内科4), 丸の内病院消化器科5)
上腸間膜静脈血栓症による空腸壊死を認め,先天性プロテインS欠損症による凝固異常が原因と考えられた1例を報告する.症例は53歳の男性で,下腹部痛を主訴に近医を受診した.発熱と腹部膨隆,下腹部に圧痛,反跳痛を認めた.腹部単純X線像では著明に拡張した小腸ガス像,腹部CTでは門脈・上腸間膜静脈の閉塞像,腹水の貯留,小腸の拡張と壁肥厚を認め,緊急手術を施行した.手術ではトライツ靭帯より70 cmの空腸より約120 cmにわたり暗赤色に変化した空腸を認め,空腸静脈の一部は血栓により閉塞していた.うっ血性の小腸壊死と考え,病変部を含めた小腸切除,小腸側々吻合,腸瘻造設術を施行した.術後はヘパリン,ワルファリンによる抗凝固療法を行い退院した.術後の血液検査で遊離プロテインS抗原量の低下を認め,父,兄,長男でもプロテインS活性値,遊離抗原量の低下を認め,先天性プロテインS欠損症による凝固異常が本疾患の原因と考えられた.
索引用語
superior mesenteric vein thrombosis, protein S deficiency, jejunal necrosis
日消外会誌 39: 1418-1423, 2006
別刷請求先
芳澤 淳一 〒390-8621 松本市旭3-1-1 信州大学医学部消化器外科
受理年月日
2006年1月25日
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