症例報告
虫垂原発印環細胞癌の1例
岩槻 政晃1)3), 片渕 茂1), 芳賀 克夫1), 山下 眞一1), 松崎 法成1), 村山 寿彦2), 池井 聰1), 馬場 秀夫3)
国立病院機構熊本医療センター外科1), 同 病理部2), 熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学3)
症例は41歳の女性で,平成15年7月中旬,右下腹部痛にて来院し,急性虫垂炎の疑いで当院内科へ入院した.入院時,右下腹部に腫瘤を触知し,同部位に圧痛を認めたが,筋性防御,反跳痛は認めなかった.WBC 5,500/mm3,CRP 0.05 mg/dlと炎症所見を認めず,腹部CT,超音波検査では,長径が約10 cmに腫大した虫垂を認めた.抗生剤を投与したが,腹痛は消失せず,入院後4日目に,手術目的にて外科転科となった.虫垂嚢腫と診断し,同日,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.虫垂は12 cmに腫大していた.病理組織検査にてsignet-ring cell carcinoma,切除断端陽性と診断され,第17病日,右半結腸切除術(D2郭清)を施行した.今回の症例は,初回手術において虫垂切除断端陽性であったことにより,播種性転移を来したと思われた.虫垂嚢腫が疑われる症例に対しては,鏡視下虫垂切除術の適応とするか否かはより慎重に判断すべきであると思われた.
索引用語
appendiceal carcinoma, signet-ring cell carcinoma, postoperative chemotherapy
日消外会誌 39: 1424-1428, 2006
別刷請求先
岩槻 政晃 〒860-8556 熊本市本荘1-1-1 熊本大学大学院医学薬学研究部消化器外科学
受理年月日
2006年1月25日
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