症例報告
術前放射線・化学療法併用後,骨盤内臓全摘術を施行した局所進行痔瘻癌の1例
藤田 能久, 平松 昌子, 宮本 好晴, 住吉 一浩, 横山 和武, 西田 司, 山本 誠士, 西野 弘志*, 黒川 彰夫**, 谷川 允彦
大阪医科大学一般・消化器外科, 西野医院*, 黒川梅田診療所**
症例は55歳の男性で,23歳時,痔瘻に対して手術を受けた後も難治性痔瘻で30年来の病脳期間がある.2002年8月頃より腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)の上昇を認め痔瘻癌の合併を疑い,繰り返し生検が行われたがいずれもGroup Iであった.しかし,粘液排出もみられたため2003年4月,腰椎麻酔下に生検および擦過細胞診が施行されadenocarcinomaと診断された.骨盤MRIでは周囲浸潤が著明であったため術前放射線化学療法を施行した.腫瘍マーカーの著明な低下がみられたため,2003年9月手術を行った.術中所見で膀胱浸潤が確認されたため骨盤内臓全摘術,小腸pouchによる新膀胱造設,腹直筋皮弁による会陰部再建を行った.病理組織診断は高分化腺癌および粘液癌を認めたが,周囲脂肪組織においては放射線化学療法による壊死変性を来し切除断端はいずれも陰性であった.進行痔瘻癌に対する術前放射線化学療法は局所制御において有用である可能性が示唆された.
索引用語
carcinoma of anal fisutula, neoadjuvant chemoradiotherapy, total pelvic exenteration
日消外会誌 39: 1452-1457, 2006
別刷請求先
藤田 能久 〒569-8686 高槻市大学町2-7 大阪医科大学一般・消化器外科
受理年月日
2006年2月22日
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