症例報告
大量の血性腹水を伴った胃壁外発育型gastrointestinal stromal tumorの1例
鴇田 博美, 濟陽 高穂, 岡村 孝, 袴田 安彦, 久保内 健生, 森 健一郎, 吉村 哲規, 村山 忠雄, 土田 明彦*, 青木 達哉*
都立大塚病院外科, 東京医科大学外科学第3講座*
症例は60歳の男性で,2004年2月頃から腹部膨満を自覚するようになり,4月下旬に食思不振のため前医に入院したところ,大量の腹水を伴う腹部腫瘤を指摘され,当院に転院となった.腹部CTで胃壁に接する約12 cmの腫瘤と大量の腹水貯留を認め,腹腔穿刺による性状は暗血性であった.腹水除去により全身状態が改善したところで腫瘍摘出を含めた幽門側胃切除術を行った.肉眼検査的に腫瘍は暗赤色調で,胃大彎より発生し壁外性に発育していた.病理組織ではKIT弱陽性,CD34陰性のGIST(類上皮型)であり,遺伝子検索においてPDGFRα遺伝子のexon 18に点突然変異が認められた.術後経過は良好であり腹水の再貯留なく,現在まで再発の徴候を認めていない.GISTでは臨床的に腹水貯留を来すことはほとんどなく,本症例はまれな1例と考えられたため,文献的考察とともに報告する.
索引用語
GIST, bloody ascites, PDGFRα
日消外会誌 39: 1586-1591, 2006
別刷請求先
鴇田 博美 〒160-0023 新宿区西新宿6-7-1 東京医科大学外科学第3講座
受理年月日
2006年3月22日
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