症例報告
Loss of heterozygosity解析にて診断しえた胃癌術後転移性直腸癌の1例
北村 大介1)2), 那須 元美1), 山口 浩彦1), 岡村 慎也1), 山崎 忠光1), 坂本 一博2), 鎌野 俊紀2), 藤井 博昭3)
埼玉草加病院外科1), 順天堂大学下部消化管外科2), 同 病理学第2講座3)
症例は65歳の男性で,既往歴として2001年11月,胃癌にて幽門側胃切除術を施行した.D2,根治度A,病理組織学的検査所見はtub2,2type,mp,ly1,v1,n0であった.術後2年の2003年10月,下血を認めたため,大腸内視鏡検査を施行したところ,肛門縁から6 cmの部位に1/2周性の2'typeの腫瘍を認めた.生検の結果,中分化腺癌であったが,発育があまりにも急激なため,原発性直腸癌は考えにくく,転移性直腸癌を疑った.胃癌の摘出検体と直腸癌の生検検体をloss of heterozygosity(以下,LOHと略記)解析した結果LOHパターンが一致したため胃癌術後転移性直腸癌と診断した.2003年11月,手術施行したが切除できず人工肛門を造設した.術後,化学療法としてTS-1/CDDP施行し外来にて経過観察していたが,2004年9月,肝不全にて死亡した.LOH解析は癌の原発性,転移性の診断に非常に有用であると思われた.
索引用語
gastric cancer, metastatic cancer of the rectum, loss of heterozygosity (LOH)
日消外会誌 39: 1643-1648, 2006
別刷請求先
北村 大介 〒113-8421 文京区本郷2-1-1 順天堂大学下部消化管外科
受理年月日
2006年3月22日
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