原著
術後肝転移のリスク要因としての大腸癌間質におけるosteopontin陽性tumor-associated macrophageの局在
石丸 英三郎, 今野 元博, 奥野 清隆, 塩崎 均, 大柳 治正
近畿大学医学部外科
はじめに:進行大腸癌術後の異時性肝転移発生は予後を大きく左右するため,そのhigh risk群を選別することが重要である.Osteopontin(以下,OPN)は腫瘍の転移・増殖などに関与する細胞接着配列を有するリン酸化糖タンパクである.そこで,大腸癌における肝転移とOPNの発現の関連について免疫組織化学的に検討した.対象と方法:進行大腸癌切除症例を同時性肝転移群30例,異時性肝転移群17例と非肝転移群54例の3群に対して抗OPN,CD68,CD105抗体を用いた免疫組織化学的染色を行った.結果:OPNの主な発現は腫瘍細胞ではなく,腫瘍周囲間質に浸潤するマクロファージ(tumor associated macrophage;以下,TAM)の一部に認められた.TAMにおけるOPN陽性TAMの割合(OPN/TAM),ならびに微小血管密度(以下,MVD)を腫瘍周囲間質の局在別に検討したところ,異時性肝転移群を対象とした単変量解析の結果,中心部のMVDならびに先進部と中心部のOPN/TAMの3因子に有意差を認めた.この3因子を用いた多変量解析では,先進部間質および中心部間質のOPN/TAMが異時性肝転移の危険因子である可能性が示唆された.考察:進行大腸癌術後異時性肝転移発症のhigh risk群選別の一助として,切除標本の腫瘍先進部間質ならびに中心部間質のOPN/TAMの検討の有用性が示唆された.
索引用語
colorectal cancer, liver metastasis, osteopontin, tumor-associated macrophage
別刷請求先
今野 元博 〒589-8511 大阪狭山市大野東377-2 近畿大学医学部外科
受理年月日
2007年1月31日
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