症例報告
被嚢性腹膜硬化症術後再発に対して再手術を施行した1例
渡部 通章, 向井 英晴*, 高尾 良彦, 中山 昌明**, 穴澤 貞夫, 矢永 勝彦
東京慈恵会医科大学外科, 古川橋病院外科*, 東北大学大学院医学系研究科腎不全対策研究講座**
症例は55歳の男性で,慢性腎不全に対して1993年9月に腹膜透析が導入された.腹膜炎のため,2002年5月に血液透析に移行した.保存的治療に抵抗性の被嚢性腹膜硬化症(以下,EPS)と診断され同年11月に初回の手術(被嚢剥離術)が施行された.その後,EPS再発によるイレウスとなり保存的治療では改善せず,2004年4月に再手術(被嚢剥離術)が施行された.初回と同様に小腸全体が硬い厚い膜で被われ癒着していた.さらに,初回術後の癒着もあったが被嚢をすべて剥離した.術中2か所で小腸を損傷したためにその口側で人工肛門を造設した.手術時間6時間30分,出血量728 g.術後11日目で全粥摂取可能となり内科に転科転床した.EPSに対する手術治療は成績不良かつ致命的合併症の発生率が高いとされていた.術前の全身状態,感染を確実にコントロールし,慎重な手技を徹底することで,EPSに対する再手術は可能と考える.
索引用語
encapsulating peritoneal sclerosis, continuous ambulatory peritoneal dialysis, sclerosing encapsulating peritonitis
別刷請求先
渡部 通章 〒105-8461 港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科学教室
受理年月日
2007年1月31日
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