症例報告
根治的化学放射線療法後の放射線性心膜炎に対し胸腔鏡下心膜開窓術を施行した胸部食道癌の1例
久倉 勝治, 寺島 秀夫, 永井 健太郎, 野崎 礼史, 明石 義正, 只野 惣介, 大河内 信弘
筑波大学消化器外科
症例は55歳の男性で,胸部中部食道扁平上皮癌に対し,放射線化学療法(原発巣に対する総線量は70 Gy)を施行した.42か月後,縦郭リンパ節転移を認めたため30 Gyの照射を追加した.その後,放射線性心嚢炎による心タンポナーデ症状を呈したため,繰り返し経皮的心嚢穿刺・ドレナージを施行した(4回/5か月).初回放射線化学療法から54か月後,胸腔鏡下心膜開窓術を施行した.切除された心膜は線維の増生が著明で癌の再発は認めず,放射線性の心膜炎と考えられた.術後の経過は良好で,術後1か月間,心嚢液貯留なく心不全症状を認めていない.心嚢液貯留に対する外科治療を文献的に考察し,放射線性心膜炎に対する胸腔鏡下心膜切開術が低侵襲であるだけでなく,長期的な効果が期待できる手技であることを論じた.
索引用語
video-assisted thoracoscopic pericardial window, esophageal carcinoma, radiation pericarditis
日消外会誌 40: 1570-1575, 2007
別刷請求先
久倉 勝治 〒305-8577 つくば市天王台1-1-1 筑波大学大学院人間総合科学研究科先端応用医学専攻
受理年月日
2007年2月28日
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