症例報告
穿孔5年後に癌性腹膜炎を来した早期胃癌の1例
大塚 敏広, 坂東 儀昭, 三好 康敬, 岩坂 尚仁
健康保険鳴門病院外科
症例は50歳の男性で,1998年9月上旬,心窩部痛を主訴に受診した.腹部単純X線検査でfree airが認められ,上部消化管内視鏡検査では胃体下部前壁に潰瘍を認めた.胃潰瘍穿孔の診断で緊急開腹手術を施行した.胃体下部大彎前壁に穿孔部を認め,広範囲胃切除とBillroth-I法による再建術を行った.切除標本では胃体下部大彎側前壁に2.5×1.8 cm大の潰瘍性病変を認め,中心に0.3 cm大の穿孔を認めた.病理組織学的検査では,潰瘍縁に壁深達度sm2の中分化型腺癌を認めた.術後は定期的に画像,血液検査を施行するも再発傾向はみられなかった.2003年9月上旬に胆石症の診断で,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中に腹膜播種と思われる白色の結節を多数認め,病理組織学的検査で腹膜播種と診断され,化学療法を施行したが,効果なく癌性腹膜炎で死亡した.早期胃癌穿孔はまれであり,穿孔5年後に,癌性腹膜炎を来した早期胃癌の1例を経験したので報告する.
索引用語
perforation of early gastric cancer, peritonitis carcinomatosa
日消外会誌 42: 1390-1395, 2009
別刷請求先
大塚 敏広 〒790-0024 松山市春日町83 愛媛県立中央病院外科
受理年月日
2008年12月17日
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