症例報告
食道胃接合部に発生した食道扁平上皮癌と胃腺癌の衝突癌の1例
梅邑 晃, 北村 道彦, 澤田 正志1), 加藤 拓見2), 梅邑 明子, 渋谷 香織, 渋谷 俊介, 楠田 和幸, 鈴木 雄, 遠藤 義洋
岩手県立胆沢病院外科, 総合花巻病院外科1), 東北大学大学院先進外科学2)
食道胃接合部(esophagogastric junction;以下,EGJ)は扁平円柱上皮境界を有するため重複癌が発生しやすいが,衝突癌の報告はまれである.今回,EGJに発生した食道扁平上皮癌と胃管状腺癌の衝突癌の1例を経験したので報告する.症例は85歳の男性で,嚥下困難を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査で下部食道から噴門部にかけて3型腫瘍を指摘された.当初は食道癌の噴門部浸潤を疑ったが,細胞診で扁平上皮癌と管状腺癌を認めた.噴門部重複癌の診断で下部食道切除,胃全摘,Roux-en Y再建を施行した.病理組織学的には,扁平上皮癌と管状腺癌が組織学的移行を伴わず,明瞭な境界を持って接しており衝突癌と考えられ,また一部のリンパ節には両成分の転移を認めた.衝突癌は病理組織学的検索なくして術前に診断することは困難であり,EGJに発生する悪性腫瘍では常に衝突癌を念頭に入れる必要があると考えられた.
索引用語
collision carcinoma, esophagogastric junction, esophageal cancer
日消外会誌 42: 1460-1465, 2009
別刷請求先
梅邑 晃 〒023-0864 奥州市水沢区龍ヶ馬場61番地 岩手県立胆沢病院外科
受理年月日
2009年2月18日
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