症例報告
術前診断しえた大網出血の1例
蒔田 勝見, 緑川 武正, 八木 秀文, 藤原 康朗, 相田 邦俊, 坂本 道男, 横山 輝和1), 大久保 雅彦2)
医療法人社団朝菊会昭和病院外科, 同 放射線部1), 大久保病院2)
症例は61歳の男性で,平成19年3月,腹部全体の痛みと腹部膨満を主訴に当院受診.血液検査でHb 9.5 g/dlと貧血を認め,腹部超音波検査および腹部CTで腹腔内貯留液を認め,腹腔内出血を疑った.腹部造影CT(CT angio)を行ったところ,左上腹部大網上に腫瘤性病変と動脈相にて左胃大網動脈と連続する血管から造影剤の漏出がみられ,左側大網出血と診断した.全身状態が安定していたため経過を見ていたが,その2時間後,血圧の低下傾向,Hb 8.7 g/dlと低下,腹部超音波検査で腹腔内貯留液が増量していたため,緊急手術を施行した.術前診断同様,左側大網動脈からの動脈性出血を確認,大網部分切除術を行い止血した.本邦での特発性大網出血,大網血腫の論文報告は17例,うち術前診断がなされた症例は5例,疑診2例であり,本例のごとく術前CT angioにより出血部位を確認しえた症例はこれまで報告されていない.
索引用語
omental hemorrhage, Idiopathic, CT angiography
日消外会誌 42: 1466-1471, 2009
別刷請求先
緑川 武正 〒819-0375 福岡市西区徳永911-1 昭和病院外科
受理年月日
2009年1月28日
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