症例報告
高分化型のBorrmann IV型胃癌の1例
中沼 伸一, 木南 伸一, 尾山 勝信, 舟木 洋, 藤田 秀人, 二宮 致, 伏田 幸夫, 藤村 隆, 萱原 正都, 太田 哲生
金沢大学大学院医学系研究科がん局所制御学
症例は58歳の女性で,多発性骨髄腫の化学療法中にCTにて胃体上部の壁肥厚と壁内に多数の嚢胞性病変を指摘された.胃透視検査では体上部から穹窿部に境界不明瞭な壁の硬化を認め,胃内視鏡検査所見は胃体上部後壁を中心とした境界不明瞭な丈の低い結節状隆起を呈していた.組織診は高分化型の腺癌であった.多発性胃粘膜下嚢腫を伴ったBorrmann IV型の進行胃癌と診断し手術を施行した.癌は体上部から穹窿部全体に浸潤し,漿膜露出と腹膜播種も認めた.病理組織学的検査所見は明瞭な腺腔形成を示す高分化型の腺癌で繊維化を伴いびまん浸潤していた.免疫染色検査ではMUC2陰性,MUC5AC・MUC6陽性で胃型であった.高分化型のBorrmann IV型胃癌はまれである.本症例では拡張した癌腺管と,境界不明瞭で丈の低い結節状隆起を示した内視鏡像が特異であり,前者は高分化型Borrmann IV型癌に,後者は胃型の分化型癌に関係した性質と考えられた.
索引用語
well differentiated adenocarcinoma, Borrmann type 4, gastric phenotype
日消外会誌 42: 1472-1477, 2009
別刷請求先
中沼 伸一 〒920-8641 金沢市宝町13-1 金沢大学大学院医学系研究科がん局所制御学
受理年月日
2009年1月28日
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