症例報告
発症から短時間で門脈ガス血症を呈し手術で救命しえた上腸間膜動脈閉塞症の1例
斎藤 淳一, 小林 直之, 関 大仁1), 上山 義人2), 池田 俊昭3), 中村 哲也, 岩田 憲治, 栗原 英二
稲城市立病院外科, 慶應義塾大学医学部外科学教室1), 稲城市立病院病理診断部2), 同 放射線科3)
症例は86歳の女性で,心房細動に対しアスピリン100 mg/日を内服していた.腹痛,下痢・嘔吐を認め受診.腹膜刺激症状と腹部単純X線検査で著明な小腸ガス像を認めた.発症3時間後のCTで肝臓のair density area,門脈内ガス像(portal venous gas;以下,PVG),腸管壁内気腫・壁浮腫像を認め,腸管壊死を疑い手術を施行した.中等量の血性腹水が存在し,Treiz靭帯より120 cmの小腸より壊死部と灰白色の虚血腸管を認めた.上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMA)閉塞症による小腸壊死と診断し,小腸大量切除・回盲部切除を行った.病理組織学的に小腸の著明な出血壊死が見られ,粘膜層の凝固壊死および出血が認められた.腹水培養で細菌は同定されず,第25病日に内科転科となった.発症後3時間でPVGを呈したSMA閉塞症の報告は他に1例のみであり,貴重である.本疾患は予後不良であり,腸管壊死を疑う場合,早期の開腹術が予後改善につながると考えられた.
索引用語
portal venous gas, superior mesenteric artery occlusion
日消外会誌 42: 1512-1516, 2009
別刷請求先
斎藤 淳一 〒206-0801 稲城市大丸1171 稲城市立病院外科
受理年月日
2009年1月28日
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