症例報告
胃癌による髄膜癌腫症に対し腰椎髄液腔―腹腔短絡手術が緩和医療に寄与した1例
桑原 道郎, 江嵜 秀和*, 西躰 隆太*, 恒川 昭二*, 滝 吉郎*, 河合 潤**
日本赤十字社和歌山医療センター外科, 関西電力病院外科*, 同 病理部**
症例は62歳の男性で,胃腺腫に対し内視鏡的粘膜切除術を施行された後,毎年上部消化管内視鏡検査を施行されていた.採血でCEA 75 ng/dlと高値を示し,EMR瘢痕からの生検で印鑑細胞癌が認められ胃癌と診断された.手術予定となったが,頸部痛,肩こり,頭痛を認め,立てなくなり,複雑てんかん発作で緊急入院となった.入院当日の髄液検査で髄腔内圧が35 cmH2O以上で,減圧により症状が劇的に改善した.髄液から印鑑細胞が検出され,癌性髄膜炎による脳圧亢進症状と診断し,腰部硬膜下腔―腹腔シャント術を施行した.TS-1とCDDPによる化学療法を開始し,普段の生活に戻った.退院後約2か月目の朝6時にトイレで倒れているのを発見され救急車で搬送されたが,前日まで朝夕の散歩も普段通りしていたとのことであった.その後,意識が戻ることなく,再入院後1週間で死亡された.髄腔内圧は正常でシャントチューブに問題はなかった.
索引用語
meningeal carcinomatosis, gastric carcinoma, lumbo-peritoneal shunt
日消外会誌 42: 1557-1561, 2009
別刷請求先
桑原 道郎 〒640-8558 和歌山市小松原通4-20 日本赤十字社和歌山医療センター外科
受理年月日
2009年2月18日
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