症例報告
急性肝不全を呈したのち自然消失した術後門脈血栓症の1例
神田 光郎, 三輪 高也, 武内 有城
名古屋記念病院外科
症例は50歳の女性で,2004年7月中旬に肝硬変を伴う難治性食道胃静脈瘤に対して胃上部切除術,脾摘術を施行した.2004年12月中旬に意識障害を来し,緊急入院となった.ショック状態を呈し,血液検査にて高度の肝機能障害と貧血を認めた.造影CTにて門脈右枝から本幹にいたる広範な門脈血栓を認め,上部消化管内視鏡検査で胃出血がみられた.門脈血栓症と,それによる急性肝不全,消化管出血と診断し全身管理を開始した.門脈血栓に対する血栓溶解療法を検討したが,併存する胃出血の内視鏡的止血が困難であり,循環動態の安定と出血の制御を優先し輸血などの補充療法を中心に行い経過をみた.血栓は1週間後に自然縮小が確認され,それに伴って経時的に全身状態の改善が得られた.7週間後に血栓は自然消失し,退院となった.特異な経過を示した胃上部切除術,脾摘術後の門脈血栓症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
索引用語
portal vein thrombus, liver failure, upper gastric resection
日消外会誌 42: 1568-1573, 2009
別刷請求先
神田 光郎 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学大学院消化器外科学
受理年月日
2009年2月18日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|