症例報告
鏡視下に修復しえた大腿ヘルニア虫垂嵌頓の1例
太田 竜, 小根山 正貴, 高橋 保正, 河原 祐一, 北村 雅也, 後藤 学, 関川 浩司
川崎幸病院消化器病センター外科
症例は72歳の女性で,右鼠径部腫瘤を主訴に来院された.腹部CTにて右大腿輪より突出するヘルニア嚢が存在し内部に嵌頓した虫垂を認めた.用手的に還納は不能であった.症状は軽微で炎症所見はなかったが,発症から長時間経過し虫垂壊死を示唆する所見を認めたため手術を行った.鏡視下に腹膜外アプローチにて腹膜前腔より鼠径部を観察したところ,右大腿輪に嵌頓したヘルニアを認めた.これを剥離して内容物を腹腔内に還納した後,meshにて大腿輪を修復した.その後,気腹して腹腔内を観察すると,虫垂に明らかな血行障害は認めなかったが肉眼的に炎症所見を認め,腹腔鏡下虫垂切除術を併施した.本術式は鼠径部の観察が容易でヘルニアの整復が直視下にでき,腹腔内操作にて虫垂切除を行え,それぞれ操作が独立しており,人工膜による感染発症予防の観点からも有用な術式と考えられた.
索引用語
femoral hernia, incarceration of appendix
日消外会誌 42: 1631-1636, 2009
別刷請求先
太田 竜 〒212-0021 川崎市幸区都町39-1 川崎幸病院消化器病センター外科
受理年月日
2009年2月18日
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