原著
止血剤の癒着性腸閉塞に及ぼす影響
沖野 基規, 富恵 博, 松井 則親, 植木 幸一, 守田 信義, 江里 健輔
山口大学第1外科学教室
胃切除術を施行した226例の胃癌患者を対象として,止血剤の投与量と癒着性腸閉塞の発生頻度との関係をretrospectiveに検討した.癒着性腸閉塞の発生頻度は,メナテトレノン非投与群3.9%(3/77)であるのに対し投与群では13.4%(20/149)と,投与群で有意に発生頻度が上昇していた.メナテトレノンを400 mg/w以上投与した大量投与群の癒着性腸閉塞発生頻度は18.8%(6/32)と,非投与群の4倍以上の発生頻度に達していた.他の止血剤(カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム,トラネキサム酸,ヘモコアグラーゼ,結合型エストロゲン)では,投与の有無と癒着性腸閉塞の発生頻度との間に,有意差はなかった.メナテトレノンは開腹術後の癒着性腸閉塞の発生頻度を上昇させる可能性があり,術後に漫然と大量投与すべきではない.
索引用語
adhesive ileus, hemostatics, menatetrenone, gastric cancer, gastrectmy
別刷請求先
沖野 基規 〒755 宇部市大字小串1144 山口大学医学部第1外科
受理年月日
1989年11月8日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|