原著
肝切除術後のcefuzonamの腹腔内移行
花井 拓美, 由良 二郎, 田中 守嗣, 橋本 俊, 保里 恵一, 荻野 憲二, 水野 章
名古屋市立大学第1外科
腹腔内感染症の合併頻度が高い肝切除例について,術後感染の予防目的でCefuzonam(CZON)を投与し,その体内動態について検討した.対象は肝硬変例5例,非肝硬変例6例とした.CZON 1g静注後の1PODの血中,1,2,3PODの尿中および腹水中CZON濃度を検討した.濃度測定はbioassay法によった.成績:1PODの血中CZON濃度は肝硬変群,非肝硬変群,それぞれ1時間で平均37.1,30.2 µg/mlのピーク値を示した.尿中濃度は肝硬変群の3PODを除き両群とも各病日,2時間で平均最高濃度1,980から3,825 µg/mlを示し排泄遅延を示した.腹水中濃度は肝硬変群1POD 2時間値においてのみ21.9 µg/mlと最高値を示したが,その他の時間帯では大きい変動はみられなかった.両群1,2,3PODの8時間値は平均6.3から12.5 µg/mlの高い値を示した.肝切除術後本剤1日3 gの予防的投与は腹水中へ高濃度に移行し腹腔内感染予防として評価できるものと考えられる.
索引用語
hepatectomy, prophylactic administration of antibiotics, cefuzonam, intraabdominal penetration
日消外会誌 23: 1056-1061, 1990
別刷請求先
花井 拓美 〒467 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 名古屋市立大学医学部第1外科
受理年月日
1990年1月10日
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