原著
閉塞性黄疸患者における胃粘膜防御と酸分泌の関係について
大森 浩明
岩手医科大学第1外科(指導:斎藤和好教授)
閉塞性黄疸に合併する急性胃粘膜病変の発症を究明するため健常胃粘膜症例16,減黄処置前症例18,減黄後症例11に対して内視鏡下に前庭部,胃角,体部の胃粘膜血流(GMBF),potential difference(PD),胃粘膜prostaglandin E2,F2α(PGE2,F2α)とmucus lakeのpH(pH)を測定した.GMBFは健常例では胃体部が74.1 ml/分/100 gで有意に高く,減黄前例では反対に59.0と低値を示した.PDは減黄前例では3部位とも健常例より低値をとる傾向にあった.pHは両群ともほぼ同じ値を示した.減黄後はCMBFは前庭部,胃体部で高値,胃角部で低値となる傾向を認め,PDは3部位において高値となる傾向を認めた.pHは変化がみられなかった.PGE2は3部位とも減黄後低値となり,とくに胃体部では有意の差があった.以上より,閉塞性黄疸時の急性胃病変の原因として粘膜防御機構の破綻が示唆され,とりわけ,PD,PGE2の低下が重要な役割を果たしていると思われた.
索引用語
obstructive jaundice, gastric mucosal blood flow, potential difference of the gastric mucosa, gastric mucosal prostaglandin, gastric pH
日消外会誌 23: 2000-2007, 1990
別刷請求先
大森 浩明 〒020 盛岡市内丸19-1 岩手医科大学第1外科
受理年月日
1990年4月11日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|