原著
食道癌における重複癌症例の検討
山本 雅一, 吉田 操, 村田 洋子, 室井 正彦, 小川 利久, 門馬 久美子*, 榊 信廣*
東京都立駒込病院外科, *同 内科
1975年から1989年7月までに経験した421例の食道癌を対象とし,食道癌症例における重複癌について検討を加えた.重複癌は51例(12.1%)で,同時性26例(6.2%),異時性25例(5.9%)であった.重複部位の検討では胃癌が25例(全体の5.9%;重複癌の49%)と多く,同時性15例,異時性10例であった.また,早期胃癌は19例(76%)であった.次に多い重複部位は,口腔,咽頭,喉頭などの頭頸部領域の16例(同時性5例,異時性11例)(全体の3.8%;重複癌の31%)であり,うち10例(62.5%)は食道癌診断以前にそれらの癌が診断されていた.3重複以上の多重複癌は5例(重複癌の9.8%)であり,いずれも初癌から5年以上の生存例であった.食道癌切除後の経過年数との検討では,術後5年以上7年末満経過症例の重複癌発生率(23.1%)は,3年以内の症例の発生率(1.1%)と比較すると有意に高かった.近年,食道癌における重複癌症例は増加しており,現況を踏まえた日常診療が重要と考えられた.
索引用語
esophageal cancer, synchronous or metachronous primary malignant neoplasm
日消外会誌 23: 2723-2727, 1990
別刷請求先
山本 雅一 〒113 文京区本駒込3-18-22 東京都立駒込病院外科
受理年月日
1990年10月7日
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