原著
常温肝虚血時の肝エネルギー代謝の検討―正常肝および硬変肝ラットにおけるcalmodulin拮抗剤の効果―
伊豆 稔, 住田 敏之, 志賀 元, 大盛 芳路, 長尾 桓, 斉藤 英昭, 河野 信博, 森岡 恭彦
東京大学第1外科
Calmodulin拮抗剤:elziverine(ELZ)投与が常温肝虚血後のラットの生存率の改善に与える影響を検討し,さらにELZが虚血肝エネルギー動態に与える影響を高速液体クロマトグラフおよび31PNMRを用いて解析した.
1)対照群の常温肝虚血後の正常肝ラットの生存率1/7,硬変肝ラットの生存率0/8に対してELZ投与群ではおのおの8/9,8/8と有意に生存率の改善が認められた.
2)正常肝のenergy statusは虚血5分後,対照群で0.346±0.061,ELZ投与群で0.245±0.036とELZは虚血後のATPの分解を亢進した.
3)虚血前の正常肝対照群の肝組織内乳酸量:0.12±0.03 mg/gに対し,ELZ投与群では0.17±0.03 mg/gと増加しており,ELZは解糖系を亢進させている可能性が示唆された.
ELZは常温肝虚血後の生存率の改善に有用であったが,これは解糖系の九進と虚血後のATPの分解亢進によって細胞のpotentialを維持しているためと考えられた.
索引用語
hepatic ischemia, 31P-NMR, calmodulin-antagonist, cirrhosis, energy status
日消外会誌 24: 1187-1195, 1991
別刷請求先
伊豆 稔 〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学医学部第1外科
受理年月日
1991年1月16日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|