症例報告
漿膜浸潤陽性胃癌に対するcis‐dichlorodiammine platinum併用術中腹腔内温熱療法の経験
梅田 朋子, 中西 正樹, 大澤 二郎, 野中 雅彦, 田中 誠, 岡 浩, 澤辺 保範, 田中 文恵, 篠田 正昭, 小玉 正智*
朝日大学歯学部附属村上記念病院外科, *滋賀医科大学第1外科
胃癌の腹膜再発を予防する目的で,漿膜浸潤陽性胃癌症例6例に対し,cis-dichlorodiammine platinum(CDDP)を併用した術中腹腔内温熱療法を施行し,その副作用,CDDPの体内動態,臨床効果について検討した.血漿中総CDDP濃度はCDDP 25~100 mg/m2を併用した術中腹腔内温熱療法において,開始5分後すでに平均0.71 µg/mlとなり,終了直後に最高値平均1.5 µg/mlを示した.術中,術後特に重篤な合併症を認められなかった.術前PSP値が正常な2例を含む3症例において,CDDP 70 mg/m2以上の負荷症例で,術後1~2週間を最高とするs-BUN,s-creatininの一過性上昇を認めたが,全例腎不全に陥ることなく回復した.術中腹腔内温熱療法において,術後臨床化学検査上腎機能障害を引き起こさないCDDP量は今回の検討にあたっては70 mg/m2以下であると考えられた.6例中他病死1例を除き,5症例は最長6か月ではあるが無再発生存中である.
索引用語
gastric cancer with serosal invasion, intraoperative peritoneal hyperthermia, cis-dichlorodiammine platinum
日消外会誌 24: 1277-1281, 1991
別刷請求先
梅田 朋子 〒500 岐阜市橋本町3-24 朝日大学附属村上記念病院外科
受理年月日
1991年1月16日
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