症例報告
肛門周囲Paget病を伴う肛門癌の1例
工藤 通明, 小板橋 宏, 竹部 兼太朗, 大崎 和幸, 児島 高寛, 加藤 良二, 竹之下 誠一, 長町 幸雄
群馬大学医学部第1外科
肛門周囲Paget病を伴う肛門癌は,きわめてまれな疾患であり,本邦では今回われわれが経験した症例を含めて9例が報告されているにすぎない.症例は74歳男性であり,肛門周囲の疼痛と腫瘤を主訴として入院,皮膚生検の結果肛門周囲Paget病と診断された.さらに肛門癌も合併していた.
手術は腹会陰式直腸切断術を行ったがすでに両鼡径部リンパ節転移を認めた.術後,会陰部創に対しては計20Gyの腔内照射,鼡径部に対しては計14Gyの電子線照射を行ったが,会陰部皮膚の再発なども合併して初回手術後6か月で死亡した.
組織学的には,アポクリン腺原発汗腺癌であったが,今回の症例は汗腺癌がPaget病変を合併した貴重な症例と考えられた.また,従来いわれているように肛門周囲難治性皮膚湿疹では,Paget病などの存在を十分考慮した診断が重要と考えられ,積極的な外科的治療が必要と考えられた.
索引用語
extramammary Paget's disease, anal carcinoma, sweat gland carcinoma
日消外会誌 24: 2090-2094, 1991
別刷請求先
工藤 通明 〒371 前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部第1外科
受理年月日
1991年2月13日
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