原著
選択的近位迷走神経切離術後の高ガストリン血症に及ぼす胃内胆汁の影響に関する実験的研究
河崎 秀樹, 和田 大助, 古味 信彦
徳島大学医学部第1外科学教室
選択的近位迷走神経切離術(SPV)後の高ガストリン血症に及ぼす胃内胆汁の影響を実験的に検討した.術後12週では胆汁を胃内に流入させた群(胆汁群)は試験食投与後の末梢血漿ガストリン値(IRG),ソマトスタチン値(SRIF)が対照群に比較し低値で,integrated IRG,SRIF responseは胆汁群(8.98±2.27,7.14±1.62 ng・120 min/ml)が対照群(15.26±2.97,11.87±2.71 ng・120 min/ml)に比較し有意に低かった.免疫組織化学法で染色した幽門洞粘膜内G,D細胞数(30.5±3.9個/mm,22.2±1.9個/mm)は対照群(47.4±6.6個/mm,26.9±2.1個/mm)に比較し有意に少数であった.以上からSPV後に胃内に流入した胆汁はG細胞数を減らし,血中ガストリン値を低下させることが示唆された.また胆汁群の幽門洞粘膜には点状出血,発赤や表層性胃炎がみられ,胃内流入胆汁がSPV後の胃潰瘍発生の一因である可能性が示唆された.
索引用語
hypergastrinemia following selective proximal vagotomy, plasma gastrin and somatostatin responses to test meal, G and D cell populations in the antral mucosa, bile reflux gastritis
日消外会誌 24: 2126-2135, 1991
別刷請求先
河崎 秀樹 〒770 徳島市蔵本町3-18-15 徳島大学医学部第1外科
受理年月日
1991年4月17日
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