症例報告
S状結腸間膜乳頭状腺癌の1例
水本 正剛, 明石 英男, 黒川 英司, 山本 仁, 国府 育英, 岸渕 正典, 金 成弼, 佐々木 昌也, 青木 行俊, 岡野 錦弥*, 森 浩志1)
箕面市立病院外科, 同 病理*, 大阪医科大学第2病理1)
腸間膜の充実性腫瘍はまれな疾患であり,ほとんどすべての悪性腫瘍は肉腫か中皮腫である.左下腹部有痛性腫瘤を主訴に来院した42歳女性のS状結腸間膜の乳頭状腺癌の1症例を経験した.腫瘍は手拳大の大きさで,S状結腸間膜内に限局し,腫瘍とともに左半結腸切除術を施行した.病理組織検査では高分化乳頭状腺癌と未分化癌の混在を認め,卵巣の表層上皮性腫瘍(漿液性乳頭状腺癌+類内膜癌)に酷似していた.特殊染色や免疫組織化学的検討にて中皮腫や肉腫的性格は認められず,婦人科臓器,消化器臓器の綿密な検索を行ったが,結腸間膜以外に原発を疑う臓器は認められなかった.欧米および本邦の文献には同様の報告はきわめて少ない.この腫瘍の組織発生について考察を加えた.術後3年の現在,再発の兆候なく元気に日常生活を営んでいる.
索引用語
neoplasms of peritoneum/mesontery/mesocolon, peritoneal serous papillary carcinoma, ovarian neoplasms
日消外会誌 25: 2564-2568, 1992
別刷請求先
水本 正剛 〒562 箕面市萱野5-7-1 箕面市立病院外科
受理年月日
1992年6月17日
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