症例報告
ハンドル外傷による総胆管瘢痕性狭窄の1例
上田 和光, 河村 正敏, 斉藤 肇, 普光江 嘉広, 福成 信博, 福島 元彦, 村上 雅彦, 石井 博, 新井 一成, 小池 正
昭和大学外科
鈍的外傷にて総胆管狭窄を来すことはまれである.今回,ハンドル外傷後黄疸を来し,手術にて軽快した1例を経験したので報告する.症例は25歳の女性.1991年5月6日ハンドル外傷にて肝・膵損傷と診断されるも保存的に経過観察し6日後に軽快退院した.しかし,受傷後17日目に黄疸が出現し再入院となった.入院時総ビリルビン値4.0 mg/dlと中等度肝機能障害を認めた.腹部超音波検査にて胆嚢と肝外胆管の著明な拡張が認められたが,結石や膵頭部腫瘤は見られなかった.内視鏡的逆行性胆膵管造影では中部胆管が約2.5 cmにわたり辺縁平滑で全周性の狭窄が見られたが,膵管像に異常はなかった.また,経皮経肝胆道ドレナージによる胆汁細胞診ではclass Iであり良性の総胆管狭窄症と診断した.黄疸は徐々に改善されたが狭窄部の拡張は得られず,受傷後58日目に胆摘・総胆管十二指腸吻合術を施行した.術後約1年の現在元気に社会復帰している.
索引用語
common bile duct stricture, blunt abdominal trauma
別刷請求先
上田 和光 〒142 品川区旗の台1-5-8 昭和大学外科
受理年月日
1992年9月9日
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