大腸粘液癌症例の臨床病理学的検討

三枝　奈芳紀, 更科　広実, 斉藤　典男, 布村　正夫, 中山　肇, 中島　伸之

千葉大学第1外科

　大腸粘液癌症例28例を高・中分化腺癌493例と比較した．粘液癌は高・中分化腺癌に比べて男性に多く（p＜0.05），平均年齢は4歳若く，また右側結腸に多かった（p＜0.05）．また有意差はないものの壁深達度は深く，リンパ節転移は多かったが，静脈侵襲は低かった．次に，粘液結節内細胞分布によりFixed（FX）型14例，Floating（FL）型11例，中間型3例に分類し検討した．その結果，FL型はFX型に比較して有意差はないものの，より若年であり，直腸に多く，浸潤・特殊型の割合が高く，深達度は深く，リンパ節転移，静脈侵襲，腹膜播種は高率に陽性であった．また．予後は有意に悪かった（p＜0.001）．HID-AB染色により，FX型はSulfomucin優位が57.1％と多く，FL型はSialomucin優位が85.7％と多く，産生粘液に差が認められた．大腸粘液癌の治療には，これらの性質を考慮し，的確な診断と手術における十分な切除郭清が肝要であると考えられた．

索引用語
mucinous carcinoma of the large bowel, high iron diamine-alcian blue stain, mucous module, fixed type and floating type of mucinous carcinoma

別刷請求先
三枝奈芳紀　〒292　木更津市桜井1010　君津中央病院外科

受理年月日
1992年10月7日

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