胃と他臓器の重複癌症例の検討―肺癌，食道癌との重複癌に対する考察を中心に―

寺島　信也, 寺西　寧, 尾形　真光, 木暮　道彦, 渡辺　智, 星野　豊, 小野　友久, 伊東　藤男, 今野　明, 児山　新, 今野　修, 菅野　智之, 井上　仁, 元木　良一

福島県立医科大学第1外科

　重複癌は増加の傾向にある．教室では1980年1月から1991年8月までに366例の胃癌症例を経験したが，このうち39例（10.6％）が他臓器との重複癌であり，22例は同時性，17例は異時性重複癌であった．胃癌と重複した癌の発生部位は肺12例，食道8例，結腸―直腸4例その他であった．同時性重複癌は消化器系の癌に多かった．臨床病理学的には癌の家族歴陽性者，早期癌，分化型腺癌が多かった．胃癌，他臓器癌ともに治癒切除が可能であった症例の5年累積生存率は56％であった．一方，非治癒切除にとどまったか切除されなかったものの成績は不良であった．胃と他臓器の重複癌の予後は両者に対して治癒切除が可能であったか否かにかかっており，成績向上のためには術前の各臓器にわたる精査と，術後は第2癌の発生に十分注意することが重要と異われた．

索引用語
multiple primary cancer, gastric cancer, gastric cancer with lung cancer, gastric cancer with esophageal cancer

別刷請求先
寺島　信也　〒960-12　福島市光が丘1　福島県立医科大学第1外科

受理年月日
1993年1月13日

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