術後methicillin-resistant Staphylococcus aureus腸炎の予防対策とその治療―とくにVancomycin経口・経腸投与の有効性について―

草地　信也, 炭山　嘉伸, 長尾　二郎, 川井　邦彦, 有馬　陽一, 栗田　実, 吉田　祐一

東邦大学外科学第3講座

　Methicillin-resistant Staphylococcus aureus（以下MRSA）による術後感染性腸炎の11症例を対象としてその対策と治療を検討した．下痢量の推移をみるとVancomycin（以下VCM）投与症例では他剤投与例に比べ有意に減少していた．重症例では低アルブミン血症とMRSAの各種トキシンによる透過性の亢進から肺水腫となり，呼吸不全を呈した．このため後期に経験した5症例には発症早期からVCMの経腸投与と凍結人血漿の大量投与を行い，予後は良好であった．本症の早期にはMRSAは腸管内にとどまることからVCMの経腸投与は副作用が少なくきわめて有効であった．また，本症では体液の喪失が激しく，脱水，低アルブミン血症から循環不全をきたすため，凍結人血漿の投与と厳重な輸液管理が必要となった．

索引用語
managements of postoperative MRSA enterocolitis, prophylaxis of postoperative MRSA enterocolitis, vancomycin

別刷請求先
草地　信也　〒153　東京都目黒区大橋2-17-6　東邦大学付属大橋病院外科学第3講座

受理年月日
1993年1月13日

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