症例報告
甲状腺腺腫をともなったZenker憩室の1例
上松 俊夫, 土江 健嗣, 岩田 祐輔, 青山 貴彦, 久納 孝夫*, 堀 明洋*, 早川 直和*
名城病院外科, 名古屋大学第1外科*
Zenker憩室は比較的まれな疾患でありその手術例の報告も少ない.われわれは甲状腺腺腫を伴ったZenker憩室の1例を経験したので報告する.症例は73歳の男性.5年前から嚥下障害があり,1年前から前頸部の腫瘤に気づいていた.頸部CT検査にて,右葉の甲状腺腫とは別に,左の頸部に特徴的な楕円形の含気を認めZenker憩室の合併を疑った.食道造影と食道内視鏡検査にて嚢状のZenker憩室の存在を確認した.手術は甲状腺右葉切除術とZenker憩室切除術を施行した.甲状腺腫は大きさ90×70×35 mmの濾胞状腺腫で,Zenker憩室の大きさは25×15 mmで,扁平上皮と薄い筋層から成る真性憩室であった.Zenker憩室は内圧性の憩室であり,自験例では,甲状腺腫瘍が偶然合併し気管や食道を圧排することにより,Zenker憩室の増大や嚥下障害の発生に間接的に関与したと考えられた.
索引用語
Zenker's diverticulum, computed tomography, thyroid adenoma
日消外会誌 26: 2026-2030, 1993
別刷請求先
上松 俊夫 〒460 名古屋市中区三の丸1-3-1 名城病院外科
受理年月日
1993年2月10日
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