原著
残胃癌と胃上部癌の臨床病理学的および粘液組織化学的検討
内藤 弘之, 柴田 純祐, 九嶋 亮治*, 川口 晃, 江口 豊, 小玉 正智, 横山 慶一*, 服部 隆則*
滋賀医科大学第1外科, 同 第1病理*
解剖学的にほぼ同じ位置より発生する残胃癌(12例15病変)と胃上部癌(39例41病変)の相違点を,臨床病理学的および粘液組織化学的に検討した.組織型では残胃癌は未分化型(60.0%)が,胃上部癌は分化型(82.9%)が多かった.早期癌では残胃癌は隆起型を,胃上部癌は陥凹型もしくは混合型を,進行癌になると残胃癌は浸潤型を,胃上部癌は限局型を呈した.腸上皮化生は残胃癌で75.0%,胃上部癌で64.1%であったが,gastritis cystica polyposa(GCP)は残胃癌で50.0%,胃上部癌7.7%と,残胃癌に高頻度であった.Galactose oxidase-shiff染色,concanavalin-A-paradoxical法III型粘液染色,High iron diamine-alcianblue染色により癌の上皮型を,胃型,腸型,混合型に分類すると,分化型早期癌において,残胃癌は胃型(66.7%)が,胃上部癌では腸型(71.4%)が多かった.残胃という特殊な環境での発癌は通常の胃癌発生と機序を異にする可能性が示唆された.
索引用語
gastric cancer of the residual stomach, gastric cancer in upper portion of the stomach, mucin-histochemistry, gastritis cystica polyposa, epithelial type of gastric cancer
日消外会誌 26: 2148-2154, 1993
別刷請求先
内藤 弘之 〒520-21 大津市瀬田月輪町 滋賀医科大学第1外科
受理年月日
1993年4月14日
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