症例報告
小腸に癌腫ならびにIIc様異型上皮巣が多発した被爆者の1例
星野 和義, 倉吉 和夫, 木島 寿久, 中村 泰啓, 菅沢 章, 牧野 正人, 木村 修, 貝原 信明
鳥取大学第1外科
症例は66歳の男性で,20歳の時に原爆に被爆,40歳の時に直腸癌のため直腸切断術を施行された.今回,上行結腸のIIa様病変ならびに腸閉塞症状が認められたため開腹手術を受けた.空腸に全周性の腫瘍が認められ,空腸の部分切除ならびに回盲部切除が施行された.切除標本の検索では空腸にBorrmann 2型様の癌腫ならびに2個のIIc様異型上皮巣が認められた.術後,残存小腸の精査によって,十二指腸ならびに空腸に多発するIIc様病変が認められた.このため再手術が施行され,十二指腸水平脚のIIa+IIc様の癌腫と,25個のIIc様異型上皮巣が認められた.DNA ploidy patternの検討では,空腸,十二指腸の癌腫はいずれもaneuploidyであり,正常十二指腸粘膜ならびにIIc様異型上皮巣の大半もaneuploidyであった.本症例は小腸に同時性に多数の上皮性腫瘍が発生したまれな症例であり,被爆との関連も考えられた.
索引用語
multiple carcinomas and dysplasias of the small intestine, atomic bomb, DNA ploidy pattern
日消外会誌 26: 2222-2226, 1993
別刷請求先
星野 和義 〒683 米子市西町36-1 鳥取大学医学部第1外科
受理年月日
1993年4月14日
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