症例報告
術後肝・肺転移に化学療法が有効であった膵腺房細胞癌の1例
神谷 剛司, 杉浦 芳章, 井上 公俊, 吉住 豊, 島 伸吾, 田中 勧, 玉井 誠一*
防衛医科大学校第2外科, 同 検査部病理*
23歳の女子の膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除を行い,術後4年で肺と肝に転移を来たしながらも,化学療法により術後8年3か月生存した症例を経験したので報告する.昭和55年10月,膵頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理はacinar cell carcinomaであった.昭和59年10月,肺・肝転移を認めたため,5-FU,cisplatin(CDDP),OK-432による化学療法を開始した.開始後5か月目でX線写真上肺転移巣は消失し,肝転移巣はMRが得られた.昭和62年2月,再び肺転移巣を認めたためFAM療法(5-FU,adriamycin,mitomycin-c)を行ったが,画像上転移巣の縮小は認められなかった.なお,開胸肺生検によってacinar cell carcinomaの転移巣であることを確認した.その後,全身状態徐々に悪化し,平成元年1月(術後8年3か月目,再発後4年3か月目)に死亡した.
索引用語
acinar cell carcinoma of the pancreas, chemotherapy for carcinoma of the pancreas, postoperative metastases in the lung and the liver
日消外会誌 26: 2357-2361, 1993
別刷請求先
神谷 剛司 〒359 埼玉県所沢市並木3-2 防衛医科大学校第2外科
受理年月日
1993年5月11日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|