原著
部分門脈動脈化術の有用性に関する実験的検討―動脈遮断肝に対する長時間観察結果―
伊藤 清高
北海道大学医学部第2外科
肝動脈血行の途絶に起因する肝不全を回避するため部分門脈動脈化術を行い,肝血行動態,酸素受給動態を中心に長期的観察を行った.雑種成犬を用い,肝動脈遮断群(N=7),肝動脈遮断下に部分門脈動脈化術を施行後48時間観察する短期観察群(N=7),同1週間観察する長期観察群(N=7)を作成した.総肝血流量は肝動脈遮断48時間後には約60%に減少したのに対し,短期観察群,長期観察群とも術前値以上を保った.門脈圧は変動をみなかった.肝酸素供給量は肝動脈結紮群で48時間後に約49%に減少したが,部分門脈動脈化群では1週間後も高値を保ちえた.肝酸素消費量は有意な変化はなかった.GOT,GPTは部分門脈動脈化群では上昇が抑えられ,1週間で前値に復した.組織学的には肝動脈遮断群では認めた壊死像は,部分門脈動脈化群では認めなかった.以上から部分門脈動脈化術は少なくとも術後1週間にわたり肝臓に有効に作用することが示唆された.
索引用語
partial portal arterialization, liver ischemia, oxygen metabolism of liver, histological change of liver
日消外会誌 26: 2775-2783, 1993
別刷請求先
伊藤 清高 〒060 札幌市北区北14条西5丁目 北海道大学第2外科
受理年月日
1993年7月7日
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