原著
大腸癌における新しい癌抗原coagulant cancer antigen 1の発現
犬房 春彦, 足立 俊之, 中村 正人, 進藤 勝久, 安富 正幸
近畿大学医学部第1外科
癌特異性抗原coagulant cancer antigen 1(CCA-1)はわれわれが発見した血液凝固第X因子を直接活性化する新しいserine proteaseである.CCA-1を認識し,その凝固活性を特異的に抑制するモノクローナル抗体AI18抗体を用いて大腸癌および大腸腺腫におけるCCA-1の発現を免疫組織学的に検討し,CEAと比較検討した.大腸癌におけるCCA-1の発現率は92%であり,CEAは98%であった.しかし,注目すべきはCCA-1がすべての症例で正常大腸組織には認められなかったのに対し,CEAでは72%の正常大腸粘膜にも発現が認められたことである.大腸腺腫内癌と大腸腺腫においては,CCA-1の発現は約半数に認められた.正常組織におけるCCA-1の発現は成人,胎児ともに扁平上皮,気管支粘液腺,胃固有線の一部分に認められたにすぎない.その生物学的特性が明らかなCCA-1は,大腸癌に特異性の高い新しい抗原である.
索引用語
colorectal cancer, coagulant cancer antigen 1, immunohistological staining, unbalanced haemostasis in cancer, direct factor X activator
日消外会誌 26: 2809-2815, 1993
別刷請求先
犬房 春彦 〒589 大阪狭山市大野東377-2 近畿大学医学部第1外科
受理年月日
1993年7月7日
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