症例報告
画像上充実性腫瘍が疑われた前腸性肝嚢胞の1手術例
朝戸 裕二, 吉見 富洋, 大久保 貴生, 石塚 恒夫, 古川 聡, 菱川 修司, 太田 岳洋, 小野 久之, 雨宮 隆太, 小泉 澄彦, 長谷川 博, 松枝 清*, 小林 尚志*, 福田 芳郎, 板橋 正幸**
茨城県立中央病院外科, 同 放射線科*, 同 病理**
画像診断上,充実性腫瘍との鑑別が困難であった線毛性前腸性肝嚢胞の1例を経験した.症例は49歳の男性.近医にてエコーで肝腫瘤を指摘され当科紹介受診し,magnetic resonance imaging(MRI)にて充実性腫瘍が疑われ入院した.腹部超音波検査では径3 cm大の内部エコーを有する低エコーの腫瘤で,computed tomography(CT)では周囲肝組織より低濃度であった.MRIのTl強調画像では軽度high intensityの腫瘤で肝細胞癌が疑われたが,血管造影,経動脈性門脈造影CTでは,悪性所見はみられなかった.エコー下穿刺にて粘稠な液体が吸引され,寄生虫性嚢胞が疑われたが十二指腸液からは虫卵は検出されなかった.粘液産生腫瘍の可能性を否定できず開腹した.胆嚢内より肝吸虫卵が検出されたが,嚢胞は病理組織学的に前腸性肝嚢胞と診断され肝吸虫との関連は否定された.本疾患は画像上充実性腫瘍と鑑別が困難で注意が必要である.
索引用語
ciliated hepatic foregut cyst, congenital liver cyst
日消外会誌 27: 1075-1079, 1994
別刷請求先
朝戸 裕二 〒309-17 茨城県西茨城郡友部町鯉渕6528 茨城県立中央病院外科
受理年月日
1994年1月12日
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