食道癌術後臓器ならびにリンパ節再発の術前予知

斉藤　貴生^1）, 筑波　貴与根^2）, 内野　眞也^2）, 掛谷　和俊^2）, 衛藤　薫^2）, 宮原　正樹^2）, 小林　迪夫^2）, 古澤　元之助^1）

国立病院九州がんセンター消化器部外科^1）, 大分医科大学第1外科^2）

　食道癌術後臓器ならびにリンパ節再発を術前に予知することを目的とし，癌遺伝子hst-1，核DNA量に従来の予後因子を加え，多変量解析によりこれら再発の危険因子を検討した．胸部食道癌根治切除77例を対象に，hst-1増幅，DNA ploldy，DNA index，heterogeneity（HG），従来の予後因子8項目の計12項目について，Cox比例ハザードモデルによる回帰分析を行った．その結果，臓器再発ではhst-1増幅，組織型，skip lesionが，リンパ節再発ではHG，skip lesionがそれぞれ独立した有意の再発危険因子であった．これらの因子の組み合わせで，臓器再発の頻度は，hst-1（＋）で，かつ，低分化型扁平上皮癌，未分化癌またはその他の組織型の場合に71％に達した．また，生検標本でのhst-1増幅およびHGの診断はほぼ可能であった．以上より，食道癌術後臓器再発については，hst-1増幅と組織型の組み合わせにより，その術前予知が可能と考えられた．

索引用語
hst-1 amplification, DNA stemline heterogeneity, postoperative recurrence of esophageal cancer

別刷請求先
斉藤　貴生　〒815　福岡市南区野多目3-1-1　九州がんセンター消化器部外科

受理年月日
1994年7月6日

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