嚢胞形成を示した無症候性機能性ラ島癌の1例

庄野　聡, 出井　雄幸, 初瀬　一夫, 玉態　正悦, 玉井　誠一^＊

防衛医科大学校第1外科, 同　中央検査部病理^*

　症例は68歳の女性．近医にて上腹部腫瘤を指摘され，紹介入院．腹部超音波検査，computed tomography，magnetic resonance imagingにて上腹部に10.3×8.1 cmの一部充実性の嚢胞性病変を認め，門脈，上腸間膜静脈は右側に圧排されていた．Tl強調画像では嚢胞内部の一部にhigh intensityの像が見られ，T2強調画像でもhigh intensityを示した．腹部血管造影検査では，背側膵動脈に栄養される明確な被膜濃染を示す病変を認めた．門脈本幹に浸潤，圧迫は見られなかった．血中インスリン値およびガストリン値は軽度上昇していたが消化性潰瘍，低血糖症状は見られなかった．8月26日開腹術施行．膵に固定した嚢胞を認め膵体尾部脾合併切除術を施行，摘出標本は直径約10 cmの嚢胞状腫瘤で内腔は不整隆起を認めた．病理組織学的にはislet cell carcinomaで，免疫染色でインスリン，ガストリン，クロモグラニンA，pro GRP，GRPに陽性を示したので嚢胞性無症候性機能性ラ島癌と診断された．

索引用語
cystic asymptomatic islet cell carcinona, islet cell tumor of pancreas, cystic tumor of pancreas

別刷請求先
庄野　聡　〒504　各務原市那加官有地　自衛隊岐阜病院外科

受理年月日
1994年7月6日

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