症例報告
噴門部における扁平上皮癌と悪性リンパ腫の衝突腫瘍の1例
村上 信一, 内田 雄三, 久保 宣博, 平岡 善憲, 野口 剛, 松本 克彦, 葉玉 哲生, 藤岡 利生*, 横山 繁生**
大分医科大学第2外科, 同 第2内科*, 同 中検病理**
患者は73歳の女性で,嚥下障害を主訴として来院した.食道切除と胃全摘術を行い,患者は術後51か月の現在再発の兆候もなく健在である.切除標本では噴門部にまたがる大きさ5.0×5.0 cm大,Borrmann 2型の病変とIIc型の胃病変が相接していた.組織学的検索では前者は低分化型扁平上皮癌で後者は悪性リンパ腫と2つの組織型が確認された.2つの腫瘍が衝突する部分の連続切片において両成分は相接していたが交雑した像は認められなかった.また,リンパ節転移巣においてはいずれか1つの成分の転移がみられ,両成分の混在は認められなかった.免疫組織学的検索では扁平上皮癌はケラチンとepithelial membrane antigenが陽性であり,悪性リンパ腫ではleucocyte common antigenが陽性であった.以上の組織学的所見は衝突腫瘍の概念に一致していた.
索引用語
collison tumor, squamous cell carcinoma of the esophagus, malignant lymphoma of the stomach
日消外会誌 27: 2574-2577, 1994
別刷請求先
村上 信一 〒879-55 大分県大分郡挾間町医大ケ丘1-1 大分医科大学第2外科
受理年月日
1994年9月14日
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