原著
細胞動態からみた残胃粘膜増殖活性に関する検討
鄭 容錫, 前田 清, 小野田 尚佳, 中西 一夫, 西村 重彦, 繁澤 晃, 久保 俊彰, 佐藤 成, 小川 正文, 加藤 保之, 吉川 和彦, 曽和 融生
大阪市立大学第1外科
幽門側胃切除後の残胃粘膜の細胞動態を増殖活性の面より,64例を対象に部位別,術式別および経時的変化について検討した.部位別では吻合部が大彎部に比べてproliferating cel nuclear antigen標識率およびOrnithine Decarboxylase活性が有意に高値を示した.術式別ではBI群で部位別に差がみられなかったのに対して,BII群ではS期細胞率,PCNA標識率およびODC活性が大彎部に比べて吻合部で有意の高値を示した.吻合部のみについてみるとBII群がBI群よりも有意のPCNA標識率およびODC活性の高値を示した.吻合部について術後経過期間でみると,5年末満群と比較して5年以上群でBII群がPCNA標識率とODC活性の有意の高値を示したのに対してBI群では逆に5年以上群で低値傾向がみられた.術式別に5年以上群でみるといずれのパラメーターもBI群に比べて有意にBII群が高値を示した.以上,残胃粘膜の細胞増殖活性は吻合部で高く,その傾向はBII群の長期経過例でより著明で,その発癌リスクの高さを示唆するものと考えられた.
索引用語
gastric remnant mucosa, cell proliferation, Proliferating Cell Nuclear Antigen, Ornithine Decarboxylase
別刷請求先
鄭 容錫 〒545 大阪市阿倍野区旭町1-5-7 大阪市立大学医学部第1外科
受理年月日
1994年11月9日
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