原著
阻血下肝灌流における肝類洞内皮細胞障害およびNafamostat mesilateによる障害抑制効果
安田 典夫, 宮崎 勝, 飯沼 克博, 大塚 将之, 中島 伸之
千葉大学第1外科
ラットを用いin situでの60分間肝血行遮断下の分離肝灌流を行い,各種灌流液による肝保護効果の生化学的および組織学的検討により行った.肝灌流は1 ml/min/kgの速度で25℃乳酸リンゲル液(25℃LR群),4℃乳酸リンゲル液(4℃ LR群),Nafamostat mesilate(10 µg/ml)添加25℃乳酸リンゲル液(25℃ NM群),NM(10 µg/ml)添加4℃ Lactate Ringer液(4℃ NM群)4℃ University of Wisconsin solution液(UW群)の5群とした.NM添加群で灌流液中s-GOT,TXB2,6-keto-PGF1 αの上昇がNM非添加群に比べ有意に抑制された.組織学的にはすべての灌流群で無灌流群に比べ肝細胞の腫脹が有意に抑制され,UW群で最も強い抑制をみた.また無灌流群でみられる類洞内皮細胞の連続性の消失および類洞内皮小孔の拡大はNM非添加群では抑制されず,NM群において明らかな抑制がみられた.阻血肝での肝灌流においてNM添加は類洞内皮細胞障害を抑制することにより微小循環を維持しその結果,肝細胞保護効果をもたらすと考えられた.
索引用語
hepatic perfusion, Nafamostat mesilate, hepatic ischemia, sinus endothelial cell
日消外会誌 29: 1629-1635, 1996
別刷請求先
宮崎 勝 〒260 千葉市中央区亥鼻1-8-1 千葉大学医学部第1外科
受理年月日
1996年3月6日
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