症例報告
1期的に根治切除しえた胃,十二指腸乳頭部,直腸の3重複早期癌の1例
石神 純也, 夏越 祥次, 徳重 正弘, 崎田 浩徳, 肝付 兼達*, 愛甲 孝
鹿児島大学医学部第1外科, 曽於郡医師会立病院*
まれな胃,十二指腸乳頭,直腸の三重複早期癌の1切除例を経験した.症例は57歳の男性で,集検で膵腫瘤を指摘され,入院後の精査で膵頭部嚢胞と判明した.さらに術前の上部および下部消化管内視鏡検査により噴門部前壁に胃癌,十二指腸乳頭部に粘膜下腫瘤様の腺癌,上部直腸にO型(IIa+IIc)の直腸癌が指摘された.胃全摘,膵頭十二指腸切除および低位前方切除を1期的に施行し,Child変法および結腸直腸の端端吻合により再建した.病理組織学的にはいずれの癌も粘膜下層内にとどまっており,リンパ節転移や脈管侵襲は認められず,胃・十二指腸乳頭部および直腸原発の3重複早期癌と診断された.各病変のp53の発現性を検討した結果,結腸癌病変にp53の発現が認められた.今後,遺伝子異常を含めた重複癌に対するスクリーニングの工夫が必要と考えられた.
索引用語
triple primary carcinoma, early cancer
別刷請求先
石神 純也 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1996年10月9日
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