食道癌手術における手術侵襲軽減目的としてのprotease inhibitor周術期投与の意義に関する検討

青笹　季文, 小野　聡, 市倉　隆, 平出　星夫, 望月　英隆, 玉熊　正悦

防衛医科大学校第1外科

　高度侵襲手術である食道癌手術の侵襲軽減を図るため術前からprotease inhibitorの予防投与を行い，systemic inflammatory response syndrome（SIRS）およびサイトカイン値の推移からその効果を検討した．食道切除症例11例を，術直後からgabexate mesilate（1.5 mg/kg/hr）の持続投与を行った術後投与群（n＝6）と，麻酔導入時から開始した周術期投与群（n＝5）に分けて比較したところ，周術期投与群では脈拍数が有意に低値で推移し，呼吸数も第3病日に有意に低かった．また周術期投与群では術後SIRSからの離脱が早く，術中，術後の血中IL-6値は周術期投与群で有意に低値で推移し，また第3病日のIL-8，CRP値も周術期投与群が低値を示した．以上より食道癌手術においては，術前からgabexate mesilateを投与することによって，手術侵襲の軽減を図ることができる可能性が示唆された．

索引用語
gabexate mesilate, surgery for esophageal carcinoma, surgical stress, cytokine, systemic inflammatory response syndrome

別刷請求先
青笹　季文　〒359　所沢市並木3-2　防衛医科大学校第1外科学教室

受理年月日
1996年11月13日

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